2007年にニューヨークタイムズで23週にわたりベストセラーになった『Stumbling on Happiness』の著者でハーバード大学の心理学者であるダニエル・ギルバート博士は「“経験”によって私たちの幸せの物差しはどんどん伸び、それに伴って、幸せを味わう能力はどんどん下がってゆく」と言っています。貧困レベルを脱した人にとって、富のレベルは幸せのレベルに大きな影響を与えない。 なぜなら、人間はお金を得て贅沢を経験すると、物差しが伸びて、それ以下のこと、日常的に経験できるようなことに喜びを感じることが難しくなる。もっと美味しいもの、もっと素晴らしいもの、もっと贅沢を、と際限がなく求めることになりやすいからだ」と言います。

このダニエル博士の説く“経験ストレッチ論”を確かめるようと、ベルギーのリエージュ大学の心理学チーム(Quoidbach et. al)が351人の参加者を対象に研究をしました。

この研究では1.大切な課題を完成する(満足感)、ロマンティックな週末を過ごす(喜び)、3.ハイキングに行って大きな滝を発見する(感動の念)、という経験による心の動きを測定する目的で、参加者の反応を観察しました。結果、“収入が高い被験者ほどこれらの経験を楽しむ能力が著しくに低かった”ということが確認されました。
また、興味深いことに、実際には高収入でない人でも、事前に大量の紙幣を見せられた後で実験を行うと、経験を楽しむ能力が著しく下がる、という結果もでました。

別の機会に行われた実験でも、大量のお金を実験の最初に見せられた学生は、そうでない学生に比べて、出されたチョコレートを味わって食べる時間が短かく、チョコレートに対する喜びの表現も少なかった、とう結果がでたのです。

検証によって「“経験”が幸せの物差しを伸ばすこと、さらに、経験の前に資金の豊かさを連想させるだけでも、物差しが伸び、喜びが減少する」ということが裏付けされたのです。

私たちの経験は幸せのハードルをどんどん上げてゆきます。時折、立ち止まって、「もっともっと」と際限なく伸びてゆく物差しを修正してみませんか? 今あるもの、今年一年に恵まれた多くのものに目を向けて、心からの喜びや感謝の気持ちを感じてみて下さい。

そして、楽しいホリデーシーズンをお過ごし下さい。新しく迎える年が、喜びと感謝にあふれた年となりますようにお祈りいたします。
(参照:Psychological Science: 2010 Jun;21(6):759-63. Epub 2010 May 18.)
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