「幸せ」の研究をしているハーバード大学の心理学者ダニエル・ギルバート博士の著書「Stumbling on Happiness」(2007年)はニューヨークタイムズで23週連続ベストセラーとなりました。この本はRoyal Society賞のサイエンス部門も受賞しています(邦訳書:『幸せはいつもちょっと先にあるー期待と妄想の心理学』早川書房)。

今回は、この書の中でギルバート教授が言う「経験―ストレッチ論(Experience-Stretching hypothesis)」の話を使って幸せのヒントを探ってみたいと思います。
このストレッチ論は”経験”が私たちの幸せの物差しを変えるというものです。未来を期待している時私たちは、私たちは胸がわくわくして幸せです。しかし2度目からの経験は、一度も経験していなかった時と同じではありません。

例えば、初めてお腹いっぱいご飯を食べられた経験。または、ふかふかの暖かい布団で眠った初めての経験。心の底から満足し喜びを感じます。でも2回目に感じる幸せは初めての時と同じではありません。そして、その経験が当たり前になった時には、幸福感はなくなっています。幸福感を得るためには、新たな経験が必要となります。もっと良いもの、もっと美味しいもの、もっと便利なもの、もっと高級なもの、もっと恵まれた暮らし、とハードルはどんどん上がります。
では、まだ経験をしていない、心のハードルが低い人はどうでしょう。この場合は、ささやかな事で幸福感を得ることができます。私たちは、経験をしていなければいないほど、または経験するまでの時間が長ければ長かった分だけ、ささやかなことでも幸せを感じます。物差しが伸びていないからです。

ギルバート博士は言います。「恵まれた生活をしている人が実は幸せを感じにくく、一見恵まれていないように見える人の方が、実は幸福に近いのだ」と。また、お金をあまりもっていない人の方が、経験へ対する価値に深く感謝し、幸福感を感じ易いのだと言います。

自分は幸せを感じにくくなっているなぁ、と思った人。幸せの物差しが伸びすぎているせいかもしれません。まずは、今自分にあるものを当然と思わないことで、感謝の気持ちを改めてみませんか。そして、自分勝手な考え方になっていないか、自分より弱い立場にある人への思いやりを忘れていないか、チェックしてみて下さい。感謝と思いやり、この二つの気持ちをしっかり持てば、伸びすぎた幸せの物差しが調整されて、感じにくくなっていた幸福感を取り戻せるはずです。
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