森の中を歩くと、なんとも言えない爽やかな香りがしますね。緑豊かな公園で澄んだ空気を胸いっぱいに深呼吸すると身体中がリフレッシュする心地がします。今回は、森の香りの正体とその働きについてのお話です。

ある種の木々や植物は、抗菌・防虫、消臭の力を持つ揮発性物質を放出します。これによって動くことのできない樹木は昆虫や動物に葉や幹を食べられないように自分を守り、微生物を避けたり誘ったり、悪い菌に感染しないように殺菌を行ったりします。生い茂った森の中で、枯葉や腐った木の実、昆虫や動物の屍骸があっても、森が爽やかに保たれるのは空気や地中に発散されたこの物質が重要な役割を担っています。また、この物質には他の植物の発芽や成長を抑えるなどの生長阻害作用の能力もあります。

この様な力を発揮するこの物質は1937年にロシアのレニングラード大学のボリス・トーキン博士によって発見され、フィトンチッドと名づけられました。フィトンチッドは緑豊かな場所、森などに豊富で、森林浴による癒しの効果はこのようなしくみで化学的に説明が可能です。
このフィトンチッドの効果を日本医科大学の研究チームが調べ、森林浴効果として2008年に論文を発表しました。東京在住の13人の参加者を対象に森林浴前後のナチュラルキラー(NK)細胞の様子を比較することでフィトンチッド効果を調べたのです。

実験では事前にフィトンチッドが豊富にあることを測定し、実験一日目に2時間、二日目には午前と午後に二時間づつ、森林浴をしてもらったのです。そして、実験前と実験後のNK細胞の変化を測定しました。

結果、実験後の測定では著しくNK細胞の活動が活発になると共に、NK細胞の量も増えていることが認められました。この効果は実験終了後、7日以上継続していたそうです。
研究チームはフィトンチッドとNK細胞の相関関係について、樹木から放出されたフィトンチッドがストレス・ホルモンのレベルを下げ、その結果、NK細胞が活発化し数も増加したのだろう、としています。(参照:Journal of Biological Regulators & Homeostatic Agents. 2008 Jan-Mar;22(1):45-55.)

自然から遠ざかれば遠ざかるほど、人間は心と身体の健康を壊してゆく、と警告を発する研究者がいます。森の香り、フィトンチッドが人にもたらす健康効果は、そんな研究者の意見を裏付けするようです。森の香りを楽しみながら、心も身体も健康に、健康な人はより健康になって下さい。
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