虐待を受けた子のDNA変化(ライトハウス2012年10月1日号)

小さな時に虐待を受けた子供はDNAレベルで実際の年齢以上に加齢が進んでいることをDUKE大学のIdan Shalev, Ph.D.の研究チームが“Molecular Psychiatry”に発表しました(April, 2012)。

Shalevチームは細胞の老化に重要な役割を担っていると考えられている、染色体の末端部にあるテロメアという部分を調べました。

テロメアは細胞分裂のたびに短くなって、一定数の分裂を行うとそれ以上は分裂できなくなります。その為、テロメアは爆弾についている導火線に例えられることがあります。テロメアの短縮はつまり細胞分裂が起こりえる回数のリミットに近づくことであって、DNAレベルでの加齢ということになるのです。

研究の結果、小さい時に酷い虐待を受けた子供(調査時の年齢は5歳から10歳)のテロメアは虐待を受けなかった子供やほぼ受けなかった子供と比べて、その短縮が著しいことがわかりました。Dr.Shalevは「虐待を受けた子供達のテロメアの短縮が元の長さを回復しなければ、本来生きられたであろう寿命よりも短命になるだろう」と言っています。
テロメアの短縮はすべての細胞の老化を決める必要条件ではありません。しかし、十分条件であることは受け入れられています。それは、分裂を繰り返すことで老化した細胞はテロメアが短くなるだけでなく、実験的にテロメアを短縮させることで細胞の老化を誘導できることから支持されています。テロメアの短縮は、心疾患、糖尿病、痴呆など、さまざまな病気との相関関係も確認されています。バイオロジカルな老化を意味するテロメアの短縮が、小さい時に酷い虐待を受けた5歳から10歳の子供にすでに起きていたことがDr. Shalevらの研究によってわかったのです。


「まだ小さいから、何もわからない(大丈夫)」、「叩いても泣かなくなったから(大丈夫)」というのは大変な間違えです。小さな子供だからこそ、心にも脳にもDNAにも深刻なダメージを受けます。


虐待を受け大人の犠牲になる子供を一人でも減らすために、まずは私たち大人が虐待された子供がどんなに深く傷つくかという認識をもってゆくことが必要です。

最期に。このような子供たちにも希望はいっぱいあります。その後の育ち方、生き方しだいで変れます。Dr. Shalevも、失われた分のテロメアは食・生活習慣・メンタルヘルスのケアなどによって、キャッチアップできるのだ、と言います。一方、ストレス、喫煙、飲酒、肥満はテロメアの短縮を促進することが知られています。
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