虐待された子供が受ける脳への影響
(ライトハウス2012年9月16日号)

虐待を受けて育った子供は心身に大きなダメージを受けます。虐待には身体的虐待の他に精神的虐待、言葉による虐待、性的虐待、およびネグレクトが含まれます。言葉の虐待や精神的虐待も身体的虐待や性的虐待と変わらないほどの強力なパワーを持って心身を傷つけます。特に小さな子供が受けるダメージは深刻です。

1998年、ハーバード・メディカルスクールのMartin Teicher博士は、小さい時にひどい虐待を受けた人の脳を調べ、健全に育った人の脳と比べました。そして、虐待を受けて育った被験者は、そうでない人と比べ大脳皮質の発達が未発達であった、という報告をしています。

同じ年にイェール大学の Dr. Douglas BremnerとUCSD のDr. Murray Stein は共同研究で虐待被害者の海馬(脳の主に記憶に関連する部分)は普通よりも小さい、ということを見つけました。

海馬の萎縮はPTSDやうつ病の患者にも確認されていて、心理的ストレスを受けて分泌されたコルチゾールが海馬の神経細胞を破壊し萎縮すると言われています。
虐待は扁桃体(情動反応や記憶に関わる部分)にもダメージを起こします。子供のトラウマを専門に研究する脳科学者のDr. Bruce D. Perryは“扁桃体に受けたダメージによって、普通の子供には何でもないようなことに、虐待を受けた子は驚愕反応を示します。また、脳が受ける影響は脳の構造的な発達だけにとどまらず、小さい時に受けた強い度重なるストレスは、気分や感情に関わる脳内物質であるドーパミンやセロトニンなど、神経伝達物質の分泌まで狂わせてしまう”と言っています。

こういった脳内物質の異常がうつ病となったり、衝動的な攻撃性となって現れる傾向があるのです。
脳は生まれてから3歳までに急速に発達するので、この期間が極めて大切です。

時々、カウンセリングで、子供の目の前で怒鳴り合いをしてしまうご両親が、「まだ小さいから、何もわからない(大丈夫)」といいますが、そうではありません。言葉はわからなくても、不安や恐怖に怯え、脳はそれに伴い成長しています。家庭内での怒鳴り合いや乱暴(DV)を見せて育てるのも子供への虐待なのです。

虐待される子を一人でも減らすため、虐待によって子供が受ける影響の深刻さを私たち一人一人が認識する必要があります。虐待を受けた子は、愛や思いやりのある健全な保護者の元で育つことによって治療効果が期待できます。同時に、専門家による心理治療を受けることも大切です。
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