笑いがもらたす心と体へのさまざまな効果については、これまでに多くの研究がされ、このコラムでも以「笑いの効用」としてご紹介したことがあります。「笑う」という能力は私たちが生まれながらにして持っているもので、教えてもらうものでも成長過程で習得する技術でもありません。

では、人はどうしてそのような能力を持ったのでしょうか。オックスフォード大学の心理学者であるRobin Dunbar 教授は、笑いが人類の進化上どのような役割を担ったのかをテーマに研究をしました。今日はDunbar教授が2011年に発表した、笑いが果した進化上の役割についてのお話をさせていただこうと思います。

教授は私たち人間が「笑い」を仲間と共有するということは、猿が互いに毛づくろいをするのと同じような役割をはたしていると言っています。笑いは毛づくろいと同じように、相手の体から不快なものを取り除き、気持ちをリラックスさせ、互いの絆を深め合うという働きをしていることを発見したからです。毛づくろいの場合は一対一ですが、笑いの場合は、それを共有した仲間に同時に起きるため、毛づくろいよりも効率のいい手段でもあります。
笑いはどんな不快なものを私たちから取り除くのでしょうか。Dunbar教授は笑うと脳内でエンドルフィンという神経ホルモンが放出されることを発表しました。エンドルフィンが分泌されると痛みに対する限界値が高まります。つまり、笑いが痛みを緩和するということです。それだけではなく、エンドルフィンは麻薬性の化学物質なので、ランナーズハイの時に起こるような幸福感をもたらしてくれるのです。(Dunbar 教授によると猿も人間の笑い方とは違いますが笑うそうです。)

また、一連の実験を通して、人は独りでコメディを見た場合よりも、4人のグループで見た方がよりたくさん笑い、同時に痛みに対する限界値が上がるということを測定しました。
教授は笑いが人類の進化上発達したのは、集団で生きる動物である人間がまとまって生きるための接着剤のような役目を果たしてきたのではないかと論じています。集団の中で人はより多く笑い、痛みを緩和すると同時に幸福感を得て、人と人の絆を深めてきたのです。
教授の発表は、幸福感の薄れた孤立化した現代人に、人が集団で生きる動物だということをリマインドさせてくれると共に、みんなで笑うことの大切さも教えてくれているようです。(2012年4月1日号)
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